自然真営道
―安藤昌益が著した独自の思想書―
江戸中期の社会思想家安藤昌益(1703~62)の思想書。稿本と刊本があり、稿本は101巻93冊。刊本は3巻3冊、1753年(宝暦3)3月刊行。
昌益の徹底した平等思想をもとに、「直耕」「互性」「自然の世」など独自の思想が説かれている。
自然トハ、互性妙道ノ號ナリ。互性トハ何ゾ。曰、無始・無終ナル土活眞ノ自行、小大ニ進退スルナリ。
小進木・大進火・小退金・大退水ノ四行ナリ。自リ進退シテ、八氣互性ナリ。木ハ始ヲ主テ、其ノ性ハ水ナリ。
水ハ終ヲ主テ、其ノ性ハ木ナリ。故ニ木ハ始ニモ非ズ、水ハ終ニモ非ズ、無始・無終ナリ。
火ハ動始ヲ主テ、其ノ性ハ收終シ、金ハ收終ヲ主テ、其ノ性ハ動始ス。故ニ無始・無終ナリ。是レガ妙道ナリ。
妙ハ互性ナリ、道は互性ノ感ナリ。是レガ土活眞ノ自行ニシテ、不教・不習・不増・不減ニ自リ然ルナリ。故ニ是レヲ「自然」ト謂フ。
活眞トハ、土ハ轉定ノ央ニシテ、土眞ハ轉ノ央宮ニ活活然トシテ無始・無終、常ニ感行シテ止死ヲ知ズ。
其ノ居ハ不去・不加ニシテ、其ノ自行ハ微止スルコト無シ、活然タル故ナリ。常ニ進デ木火ノ進氣、金水ノ退氣ヲ性トシテ轉。
常ニ退テ金水ノ退氣、木火ノ進氣ヲ性トシテ定。轉定ノ央、土體爲リ。進氣ノ精凝ハ日ニシテ、内ニ月ヲ備ヒテ轉神。
退氣ノ精凝ハ月ニシテ、内ニ日ヲ備ヒテ定靈。日月互性、晝夜互性ナリ。金氣、八氣互性ヲ備ヒテ八星轉・八方星。
日月ニ氣和シテ轉ニ囘リ、降テ定ヲ運ビ、八氣互性ヲ備ヒテ、進氣ハ四隅、退氣ハ四方ニシテ、四時・八節、轉ニ升リ、升降、央土ニ和合シテ、通横逆ヲ決シ、穀・男女・四類・草木、生生ス。
是レ活眞、無始・無終ノ直耕ナリ。故ニ轉定囘・日・星・月八轉八方横逆ニ運囘スル轉定ハ、土活眞ノ全體ナリ。
故ニ活眞、自行シテ轉定ヲ爲リ、轉定ヲ以テ四體・四肢・府藏・神靈・情行ト爲シ、常ニ通囘轉・横囘定・逆囘央土ト一極シテ、逆發穀、通開男女、横囘四類、逆立草木ト、生生直耕シテ止コト無シ。
故ニ人・物、各各悉ク活眞ノ分體ナリ。是レヲ「營道」ト謂フ。故ニ、八氣互性ハ自然、活眞ハ無二活・不住一ノ自行、人・物、生生ハ營道ナリ。
此ノ故ニ轉定・人・物、所有、事・理、微塵ニ至マデ、語・默・動・止、只此ノ自然活眞ノ營道ニ盡極ス。故ニ予ガ自發ノ書號、「自然眞營道」ト爲ルハ、是レノミ。(大序)