徒然草
―自然や人生に対する思索を恬淡と記した代表的随筆―
鎌倉末期の随筆集。二巻。吉田兼好著。
元弘元年(1331)ごろほぼ成立か。
題名は、序段の「つれづれなるままに」の冒頭の語によったものである。
執筆動機を語る序段に続き、随想風に長短243段が書きつづられている。
その内容は、自然・人事・社会・故実・回想など多方面にわたる。隠者文学・随筆文学の代表作品で、時代を超えて愛読された。
『枕草子』とともに古典随筆の双璧とされる。
つれづれなるままに、日暮らし硯に向かひて、心にうつりゆく由なしごとを、そこはかとなく書き付くれば、あやしうこそもの狂ほしけれ。(序段)
よろづにいみじくとも、色好まざらむ男は、いとさうざうしく、玉の巵の当なき心地ぞすべき。(第三段)
世の人の心惑はすこと、色欲にはしかず。人の心は愚かなるものかな。(第八段)
独りともし火のもとに文を広げて、見ぬ世の人を友とするぞ、こよなう慰むわざなる。(第十三段)
よくわきまへたる道には、必ず口重く、問はぬ限りは言はぬこそいみじけれ。(第七十九段)
偽りても賢を学ばむを賢といふべし。(第八十五段)
女のなき世なりせば、衣紋も冠も、いかにもあれ、引き繕ふ人も侍らじ。(第百七段)
寸陰惜しむ人なし。これよく知れるか、愚かなるか。(第百八段)
よき友三つあり。一つには物くるる友。二つには医師。三つには智恵ある友。(第百十七段)
花は盛りに、月は隈なきをのみ見るものかは。雨に対ひて月を恋ひ、垂れこめて春の行方知らぬも、なほあはれに情け深し。咲きぬべきほどの梢、散りしをれたる庭などこそ見どころ多けれ。(第百三十七段)
人の命ありと見るほども、下より消ゆること雪のごとくなるうちに、営み待つこと甚だ多し。(第百六十六段)
こちらの作品もオススメ!
関連リンク