新古今和歌集
―第八番目の勅撰和歌集―
第八番目の勅撰和歌集。二十巻。元久二年(1205)成立。歌数約二千首。
後鳥羽院の命により、源通具・藤原有家・藤原定家・藤原家隆・飛鳥井雅経・寂蓮(途中没)の六人の撰。
撰者のほか西行・慈円・藤原良経・藤原俊成・後鳥羽院・式子内親王など当代歌人が主流を占める。
仮名・真名の両序をもち、部立てなど『古今和歌集』に準じた面が少なくない。歌題・歌材による配列も緻密をきわめる。
繊細で優雅な調べが追求され、耽美的・ロマン的・情趣的な傾向が強く、その歌風は『万葉集』 『古今集』と並び称される。
八代集の一つ。新古今集。
春の夜の夢のうき橋とだえして 峯にわかるるよこぐもの空(藤原定家朝臣・巻一)
はかなくて過ぎにしかたを数ふれば 花に物思ふ春ぞ経にける(式子内親王・巻二)
うちしめりあやめぞかをる郭公 啼くやさつきの雨のゆふぐれ(摂政太政大臣・巻三)
見わたせば花も紅葉もなかりけり 浦のとまやの秋の夕ぐれ(藤原定家朝臣・巻四)
みよし野の山の秋風さ夜ふけて ふるさと寒くころもうつなり(藤原雅経・巻五)
消えかへり岩間にまよふ水の泡の しばし宿かる薄氷かな(摂政太政大臣・巻六)
あはれなりわが身のはてやあさ緑 つひには野べの霞と思へば(小野小町・巻八)
皆人の知りがほにして知らぬかな 必ず死ぬるならひありとは(前大僧正慈円・巻八)
駿河なる宇都の山辺のうつつにも 夢にも人に逢はぬなりけり(在原業平朝臣・巻十)
由良の門をわたる舟人かぢをたえ 行方も知らぬ恋のみちかも(曽祢好忠・巻十一)
枕だに知らねばいはじ見しままに 君かたるなよ春の夜のゆめ(和泉式部・巻十三)
白妙の袖のわかれに露おちて 身にしむいろの秋かぜぞ吹く(藤原定家朝臣・巻十五)
ほととぎすそのかみ山の旅枕 ほのかたらひし空ぞわすれぬ(式子内親王・巻十六)
もののふの八十うぢ川の網代木に いさよふ波の行方知らずも(人麿・巻十七)
ねがはくは花のもとにて春死なむ その如月の望月のころ(西行法師・巻十八)
熊野川くだす早瀬のみなれ棹 さすが見なれぬ浪のかよひ路(太上天皇・巻十九)
夢や夢現や夢とわかぬかな いかなる世にか覚めむとすらむ(赤染衛門・巻二十)
- 新古今和歌集(ウィキペディア)