懐風藻
―我が国最古の漢詩集―
我が国最古の漢詩集。一巻。撰者未詳。天平勝宝三年(751)成立。
「懐風」とは「古い詠風を懐かしむ」という意味。「藻」は美しい詩文のこと。
近江朝(七世紀後半)以後約80年間における64名の漢詩約120首を作者別、年代順に配列している。作者は、大友皇子、大津皇子、長屋王などが代表的。五言詩が多く、対句が重視されている。
有名なものでは、686年(朱鳥1)謀反事件で刑死した大津皇子の辞世の歌「臨終」などがある。
六朝・初唐詩の影響が大きく、詩作としては稚拙なものも散見されるが、大陸文化受容における過渡期の作品としてたいへん興味深い内容となっている。
侍宴(宴に侍す) 大友皇子
皇明光日月 皇明 日月と光り
帝徳載天地 帝徳 天地に載つ
三才並泰昌 三才 ならびに泰昌
万国表臣義 万国 臣義を表す
臨終 大津皇子
金烏臨西舎 金烏 西舎に臨み
鼓声催短命 鼓声 短命を催す
泉路無賓主 泉路 賓主なし
此夕離家向 この夕 家を離りて向う
述懐(懐ひを述ぶ) 越智広江
文藻我所難 文藻はわが難しとするところ
荘老我所好 荘老はわが好むところ
行年已過半 行年すでに半ばを過ぐ
今更為何労 今更になんのためにか労せん
述懐(懐ひを述ぶ) 丹墀広成
少無蛍雪志 少くして蛍雪の志なく
長無錦綺工 ひととなりて錦綺の工なし
適逢文酒会 たまたま文酒の会に逢ひて
終恧不才風 ついに不才の風を恧づ
わが思ふところは無漏にあり 釋道融
我所思兮在無漏 わが思ふところは無漏にあり
欲往従兮貪瞋難 往いて従はんと欲して貪瞋難し
路険易兮在由己 路の険易は己に由るにあり
壮士去兮不復還 壮士去つてまた還らず
- 懐風藻(ウィキペディア)