閑吟集
―恋愛歌を中心とした室町時代の歌謡集―
室町後期の歌謡集。一巻。編者未詳。永正十五年(1518)成立。
室町時代の小歌三百十一首を、四季・雑、あるいは四季・恋の順に配列し、さらに春の部が、柳・若菜・松・梅・花…のように連歌風に編集されている。
恋愛歌が中心だが、他に虚無的なもの、民謡的なものも含まれ、当時の庶民の生活感情をよく伝えている。江戸期歌謡への影響も著しい。
花の錦の下紐は 解けてなかなかよしなや 柳の糸の乱れ心 いつ忘れうぞ 寝乱れ髪の面影(1)
新茶の茶壺よなう 入れての後は こちゃ知らぬ こちゃ知らぬ(33)
何せうぞ くすんで 一期は夢よ ただ狂へ(55)
我が恋は 水に燃えたつ蛍々 物言はで笑止の蛍(59)
宇治の川瀬の水車 何とうき世をめぐるらう(64)
思ひの種かや 人の情(81)
ただ人は情あれ 朝顔の花の上なる露の世に(96)
恨みは数々多けれども よしよし申すまじ この花を御法の花になし給へ(141)
添うてもこそ迷へ 添うてもこそ迷へ 誰もなう 誰になりとも添うてみよ(145)
思へば露の身よ いつまでの夕べなるらん(154)
奥山の朴の木よなう 一度は鞘に なしまらしょなしまらしょ(156)
めぐる外山に鳴く鹿は 逢うた別れか 逢はぬ怨みか(170)
恋の行方を知るといへば 枕に問ふもつれなかりけり(180)
況んや興宴の砌には 何ぞ必ずしも人の勧めを待たんや(191)
春過ぎ夏闌けてまた 秋暮れ冬の来るをも 草木のみただ知らするや あら恋しの昔や 思ひ出は何につけても(220)
烏だに 憂き世厭ひて 墨染に染めたるや 身を墨染に染めたり(225)
あまり言葉のかけたさに あれ見さいなう 空行く雲の速さよ(235)
降れ降れ雪よ 宵に通ひし道の見ゆるに(249)
人の心は知られずや 真実 心は知られずや(255)
余所契らぬ、契らぬさへに名の立つ(270)
- 閑吟集(ウィキペディア)