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ぜん日本文化にほんぶんか
―欧米人のために書かれた禅と日本文化の入門書―

鈴木大拙だいせつ(1870~1966)著。
英文の初版は昭和13年(1938)、和訳本は北川桃雄訳『禅と日本文化』(1940)、『続禅と日本文化』(1942)。

日本の諸美術、武士道、儒教、茶道、俳句等を通して禅の精神を探究している。
禅そのものの入門書でもあり、また日本の伝統文化の入門書でもある。

一、禅は精神に焦点をおく結果、形式フォームを無視する。

二、すなわち、禅はいかなる種類の形式のなかにも精神の厳存をさぐりあてる。

三、形式の不十分、不完全なる事によって、精神がいっそう表われるとされる。形式の完全は人の注意を形式に向けやすくし、内部の真実そのものに向けがたくするからである。

四、形式主義フォーマリズム慣例主義コンベンショナリズム儀礼主義リチュアリズムを否定する結果、精神はまったく裸出してきて、その孤絶性アローンネス孤独性ソリタリネスに還る。

五、超越的な孤高、または、この「絶対なるものアブソルート」の孤絶がアスセチシズム(清貧主義、禁慾主義)の精神である。それはすべての必要ならざるものの痕跡を、いささかも止めないということである。

六、孤絶とは世間的の言葉でいえは無執着ということである。

七、孤絶なる語を仏教者の使う絶対という意味に解すれは、それは最も卑しと見られている野の雑草から、自然の最高の形態といわれているものにいたるまで、森羅万象のなかに沈んでいる。(第一章 禅の予備知識)