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菟玖波つくばしゅう
―南北朝時代に編集された連歌れんが集―

准勅撰連歌集。20巻。二条良基よしもと救済ぐさいの協力を得て編集。文和5年(1356)成立。
記紀の時代から当代までの連歌二千余首を集大成したもの。

連歌の変遷を知るうえで重要な資料である。
延文二年(1357)勅撰集に準ぜられた。

  • 朝霞春や山より立ちぬらむ
    雪に木づたふ鴬のこゑ(巻一・春上・後鳥羽院)
  • 夕顔の垣ほの露にやすらひて
    花にこととふ黄昏たそがれのそら(巻二・春下・後鳥羽院)
  • よしの山ふたゝび春になりにけり
    としのうちよりとしをむかへて(巻十二・雑一・後鳥羽院)
  • ほさぬまがきの冬のしら菊
    初時雨はつしぐれはるゝ日かげもくれ果てて(巻六・冬・前中納言定家)
  • ときしもふれる夕ぐれの雨
    佐保さほひめや春のかへさを送るらむ(巻二・春下・従二位家隆)
  • 谷の小川や水まさるらむ
    山深き春のみ雪は下きえて(巻一・春上・前大納言為家)
  • さてだに見えぬ面影ぞうき
    草の原しげき夏野の忘水(巻三・夏・前大納言為氏)
  • 涙もよほすつまとなりけり
    五月雨に軒の菖蒲の雫こそ(巻三・夏・後深草院少将内侍)
  • したのこゝろやはなれざるらむ
    行く春の霞の衣身になれて(巻二・春下・後深草院弁内侍)
  • かきくらす夕の空となるまでに
    けふのみかりに雪は降りつゝ(巻六・冬・道生法師)
  • おなじうれへにきくは虫の音
    軒ならぶ庵に月の影わけて(巻四・秋上・善阿法師)
  • 誰に見よとて涙落つらむ
    古里は花ひとりこそむかしなれ(巻一・春上・十仏法師)
  • 舟路ふなじのあとの山はいづくぞ
    松原のきのふは見えし朝霞(巻一・春上・救済法師)
  • 月をしらぬや深山みやまなるらん
    捨つる身に我がかげばかりともなひて(巻十六・雑五・救済法師)