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風土ふうど
―和辻哲郎による比較文化論の名著―

和辻哲郎(1889~1960)著。
昭和10年(1935)刊。

アジアからヨーロッパに至る地域を自然環境に基づいて、モンスーン地帯、砂漠地帯、牧場地帯の三つに分け、文化の違いを考察している。

モンスーン地帯では自然への忍従性、砂漠地帯では闘争性、牧場地帯では合理性が生まれたとしている。

日本人はモンスーン地帯に属するが、四季の変化が激しいので激情と淡泊なあきらめが混じり合っているのが特徴であるとみている。

かなり個性的な学説であり、批判も多い。

 ここに風土と呼ぶのはある土地の気候、気象、地質、地味、地形、景観などの総称である。それは古くは水土とも言われている。

人間の環境としての自然を地水火風として把捉した古代の自然観がこれらの概念の背後にひそんでいるのであろう。しかしそれを「自然」として問題とせず「風土」として考察しようとすることには相当の理由がある。

それを明らかにするために我々はまず風土の現象を明らかにしておかなくてはならぬ。(第一章 風土の基礎理論 一 風土の現象)