それから
―漱石前期三部作の第二作目―
夏目漱石(1867~1916)の長編小説。
明治42年(1909)、「朝日新聞」に連載。翌年1月、春陽堂刊。
主人公の長井代助は大学卒業後、就職も結婚もせず、父や兄からの仕送りで気ままに暮らしていた。
ある日、友人の平岡が大阪での仕事に失敗し上京、平岡の妻三千代と再会し、彼女との恋愛に苦悶する。
代助は『三四郎』のそれからの姿であり、代助自身のそれからは『門』へと続いている。
この作品以降、漱石の作風は罪悪感やエゴイズムの追求へと変化していった。
『三四郎』、『門』と合わせて「前期三部作」の第二作目。
「僕の存在には貴方が必要だ。何うしても必要だ。僕は夫丈の事を貴方に話したい為にわざわざ貴方を呼んだのです」(十四)
三千代は声を立てゝ泣いた。代助は慰撫める様に、
「ぢや我慢しますか」と聞いた。
「我慢はしません。当り前ですもの」
「是から先まだ変化がありますよ」
「ある事は承知してゐます。何んな変化があつたつて構やしません。私は此間から、――此間から私は、若もの事があれば、死ぬ積で覚悟を極めてゐるんですもの」
代助は慄然として戦いた。
「貴方に是から先何したら好いと云ふ希望はありませんか」と聞いた。
「希望なんか無いわ。何でも貴方の云ふ通りになるわ」
「漂泊――」
「漂泊でも好いわ。死ねと仰しやれば死ぬわ」
代助は又竦とした。(十六)
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関連リンク
- それから(ウィキペディア)
- 夏目漱石(ウィキペディア)
- 作家別作品リスト:夏目漱石(青空文庫)