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死霊しれい
―埴谷雄高の形而上学的思想小説―

死霊
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埴谷はにや雄高ゆたか(1909~1997)の長編小説。1章~4章は『近代文学』1946~49年、5章(1975)、6章(1981)、7章(1984)、8章(1986)を『群像』に発表。48年、3章まで真善美社刊。76年5章まで、81年6章まで講談社刊。未完。

1935年前後の左翼からの転向期を時代背景に、刑務所から出てきた3人の青年を中心人物として、意識が存在から完全に自由になる世界の可能性を求めて書き継がれている形而上学的思想小説。

難解な作品ではあるが、わが国唯一の思想小説として高い評価を得ている。

ぷふい、存在自体のなかの苦悩! いいかな、そのとき、俺はただに向う側になったばかりでなく、その向う側の苦悩の意識をいわばまず俺の存在そのものにしてみたのだ。

あっは、それこそ存在の三つの永劫えいごうの鉄則が三つもろとも一挙に打ち破られた瞬間の俺達の存在へ対する最初の心からの慰藉いしゃで、われは万象にして万象はわれなりという絶えざる実験の花火がつぎつぎに宙に打ちあげられる前に、俺達は俺達の無辺際の思いの深さをまず相手の尽きせぬ嘆きの底に示したのだ。

何故なら、いいかな、意識=存在はまぎれもなく意識=存在にほかならないからだ。(第五章 夢魔の世界)