一握の砂
―石川啄木の処女歌集―
石川啄木(1886~1912)の処女歌集。明治43年(1910)12月東雲堂書店刊。
一首三行書きの短歌551首収録。「我を愛する歌」「煙」「秋風のこころよさに」「忘れがたき人人」「手套を脱ぐ時」の5章からなる。
「東海の小島の磯の……」「はたらけどはたらけど……」「友がみなわれよりえらく見ゆる日よ……」などがとくに有名。
東海の小島の磯の白砂に
われ泣きぬれて
蟹とたはむる
頬につたふ
なみだのごはず
一握の砂を示しし人を忘れず
いのちなき砂のかなしさよ
さらさらと
握れば指のあひだより落つ
大といふ字を百あまり
砂に書き
死ぬことをやめて帰り来れり
たはむれに母を背負ひて
そのあまり軽きに泣きて
三歩あゆまず
朝はやく
婚期を過ぎし妹の
恋文めける文を読めりけり
はたらけど
はたらけど猶わが生活楽にならざり
ぢつと手を見る
友がみなわれよりえらく見ゆる日よ
花を買ひ来て
妻としたしむ
ふるさとの訛なつかし
停車場の人ごみの中に
そを聴きにゆく
かにかくに渋民村は恋しかり
おもひでの山
おもひでの川
石をもて追はるるごとく
ふるさとを出でしかなしみ
消ゆる時なし
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関連リンク
- 一握の砂(ウィキペディア)
- 石川啄木(ウィキペディア)
- 作家別作品リスト:石川啄木(青空文庫)
- 石川啄木記念館