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努力論どりょくろん
―幸田露伴の説く幸福論―

努力論
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幸田露伴こうだろはん(1867~1947)著。大正2年(1913)刊。

冒頭において、努力には「直接の努力」と「間接の努力」の二種類あることを説いている。直接の努力とは当面の努力のことであり、その時その時を力を尽くして精いっぱい頑張ること。間接の努力とは準備する努力であり、基礎・源泉の努力のことをいう。

また、本書の中で特筆すべきは幸福三説の思想である。すなわち、人生において幸福になるには「惜福」「分福」「植福」の3つを実践すればよいと説いている。

「惜福」とは福を惜しむこと。福を使い果たしてしまわないことをいう。
「分福」とは自分の得た福を他人に分け与えること。
「植福」とは福を植えること。植えられた福は徐々に成長して社会の発展に貢献することとなる。

この幸福三説こそ、本書の中でもっとも重要な思想であると言えよう。

惜福とは何様どういうのかというと、福を使い尽くし取り尽くしてしまわぬをいうのである。たとえば掌中に百金を有するとして、これを浪費に使い尽くして半文銭もなきに至るがごときは、惜福の工夫のないのである。

分福とは何様どういうことであるかというに、自己の得るところの福を他人に分ち与うるをいうのである。たとえば自己が大なる西瓜すいかを得たとすると、その全顆ぜんかを飽食し尽すことをせずしてその幾分を残し留むるのは惜福である。その幾分を他人に分ち与えて自己と共にその美を味わうのさいわいを得せしむるのは分福である。

植福とは何であるかというに、我が力や情や智を以て、人世に吉慶幸福となるべき物質や情趣や智識を寄与する事をいうのである。即ち人世の慶福を増進長育するところの行為を植福というのである。