プルターク英雄伝
―ギリシア・ローマの波瀾万丈な英雄伝―
プルタルコス(Plutarchos)(後1~2世紀)著。
正しくは「対比列伝」(Bioi Paralleroi)。
古代ギリシア、ローマに活躍したアレキサンダー、シーザー、ブルータス等政治家、軍人50人の波瀾万丈の生涯を描いた伝記。
シェークスピア劇の題材になるなど、古くから愛読されてきた。人生をよりよく生きるための示唆を与えてくれる名著。
貝殻追放
アリスチデスが町を歩いていると、見知らぬ一人の賤しい男が、往来で袖を引き止めてこう言った。
「旦那すまねえが、俺は字が書けねえから、ちょいと書いてくんねえか」
と、貝殻を差し出した。
「なんと書けばいいのか」
するとその男は、ぶっきら棒にこう答えるではないか。
「アリスチデス」
アリスチデスは、キッとその男の顔を見て、それから静かに聞いた。
「どうして君は、その人を追放しようと思うのか」
「なあに、別に訳はないんだけど、あんまりみんながアリスチデス、アリスチデスと、褒めるのを聞くのがうるさいからさ」
アリスチデスは苦笑して、黙って自分の名を貝殻に書いてやった。
信望というものは、あまり度が過ぎるとかえって墓穴を掘るものだ。(谷沢永一編訳)
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