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イソップ寓話集ぐうわしゅう
―寓話集の最高傑作―

教訓的な内容を動物などにかこつけて表わした喩え話のことを「寓話」というが、その代表的なものがこの「イソップ寓話集」である。

紀元前6世紀前半、ギリシアで活躍したアイソポス(英語読みでイソップ)が作者とされている。

「アリとキリギリス」「ウサギとカメ」「北風と太陽」「オオカミ少年」などは有名な童話となって普及している。これら寓話の中には人間の知恵が凝縮されているといえる。

わが国ではすでに16世紀の末にローマ字で印刷された『エソポのファブラス』が出版され、続いて仮名草子として『伊曽保物語』も出版された。

現在、日本人にとってもっとも身近な物語として親しまれている。

 恋をするライオンと農夫
 ライオンが農夫の娘に恋をして結婚を申し込んだ。しかし、農夫は娘を猛獣にやる決心も、ライオンが恐ろしいので断わることもできず、一時しのぎに次のようなことを考えた。

すなわち、ライオンが催促をやめなかったとき、農夫はライオンに、自分はライオンを娘の夫にふさわしいと思っているが、若い娘というものはその歯とつめをこわがるので、歯を抜きつめを切るのでなければ、娘を嫁にやることはできないといった。

ライオンは娘に心を奪われていたから、すぐにこの二重の犠牲を受け入れた。歯とつめがなくなると、農夫はライオンをすっかりばかにして、ライオンがやって来ると棒でなぐって追い出してしまった。

 自分の優れたところを大切にして他人をたやすく信用してはならないのに、他人の方を信じて自分のこの利点を捨ててかえりみない者は、以前には彼を恐れていた者たちにも簡単に打ち負かされる、ということをこの話は教えている。(塚崎幹夫訳)